2006年大阪新歌舞伎座&名古屋御園座公演
原作・脚本:マキノノゾミ/脚本:鈴木哲也
演出:宮田慶子
与謝野晶子と鉄幹を巡る、明治の文学者を中心にした群像劇

与謝野晶子:藤山直美/与謝野鉄幹:香川照之
石川啄木:岡本健一/北原白秋:太川陽介
平野萬里:山田純大/佐藤春夫:木下政治
平塚雷鳥:田中美里/菅野須賀子:匠ひびき
蕪木刑事:横堀悦夫/そして特高警察の安土兵助は小宮孝泰です
ほか子役も含めて総勢50余名の大所帯の座組み



新歌舞伎座の公式HPにも、公の稽古場日記もあります





「妻をめとらば」稽古場日記

5月7日(日)稽古初日
本読み開始
隣の席は松金よねこさんだった。今回の大勢の子役を見て、ぼそりと”子役は難しいのよね”と言った。
「レミゼラブル」の時に子役と共演したのだそうである。出番の待ち時間に”将来はどんな女優さんを目指してるんですか?”と聞かれたのだそうだ。もう充分ベテランの頃の話である。
”あの子には、私のしっかりした将来像が見えなかったんだろうねえ”
よねこさんがしみじみ言った。

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↑役者の命の今回の”台本”です


5月8日(月)本読み2日目
松金よねこさんが、伊藤四朗さんからもらったというアスパラガスを分けてくださる。
昨日より皆さん役が入ったという感じの本読み
”作中の流れに合わない台詞って、印刷が薄く感じるのよね”という藤山直美さんの一言が印象的だった。基本的に”どうお客さんに見えるか”を常に考えている人なんだなとも思った。


稽古の後、狂言の稽古に駆けつける。「樋の酒」の台詞の言い回しで、たくさん注意をされる。こりゃ難しそうだ。



5月9日(火)立ち稽古開始
香川さんがすごい。藤山さんもさすが、アドリブもどんどん飛び出してくる。
私も自分なりに動いてみた。
私の上司の役は青年座の横堀さん↓緒形拳さんに似てるなあ
yokohori

英会話学校に行って、10時過ぎから新宿コマ劇場に出演中のT田K子さんと面談。秋の星屑の会の打ち合せ

5月10日(水)2幕の立ち稽古
2幕の幕開けは、私と子供達の登場から始まる。舞台にいる大人は私一人である。彼らをリードして、客を引きつけなければいけない。
子供がきっかけを覚えるのに少々てこずるが、まずまずの成果だったと思う。
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↑長男の光役の三田村くん。可愛いねえ

本日は帰宅途中で新しいデスクトップパソコンを購入
いよいよ我家にも光ファイバーを導入だ

夜に英会話学校の講師エンリコのさよならパーティーに参加。↓
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5月11日(木)
3幕の立ち稽古
実は今回の芝居は座組みの年齢層が若い。考えてみたら男優で一番年上なのは私である。ゾーッ!ただし女優に一人私の先輩が居た。松金さんである。
第3幕の立ち稽古。私の隣の席で、その松金さんと匠さんが台詞合わせをしている。因みに松金さんは私の出身劇団テアトルエコーの先輩でもある。
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↑は松金よねこさんと、菅野須賀子役の匠ひびきさん

5月12日(金)
平野萬里役の山田純大さんが、登場で台詞を噛んだ。そしたら即座に引っ込み直し、もう1回やろうとして「勝手にやらせてもらいます」と言う。これは可笑しかった。すかさず香川さんが「勝手には駄目ですよね。小宮さん」と聞いてきたので、私も笑いながら頷いた。
山田さんは彼なりの固い演技が役にマッチして、妙に面白くなってきた。今ここでは明かせないが、彼には稽古場が爆笑した飛び道具のギャグもある。


5月13日(土)
今日からアクションの指導が入る。全体にまだ慣れていないので、喧嘩が生過ぎて、かなり危なそう。
中では、病弱な啄木役の岡本健一さんがひ弱に演じていて面白い。やたらに喧嘩で相手におぶさるのだ。


稽古終わりで、佐藤春夫役の木下政治さんらと築地のリーズナブルなお寿司屋へ行く。この界隈には、なるほど鮮魚屋や寿司屋、各種市場らしき店が密集していて飽きない。
その後シアターV赤坂でラサール石井の10年以上前の脚本「ハルちゃん」を観劇。デビッド伊東が、やさぐれ弁護士を好演。ナイロンの松永令子の検事も上手い。八十田勇一の駄目判事もよろしい。
tukiji

↑築地は新鮮な鮮魚の市場が多いのです。見てるだけで楽しい!


5月14日(日)
全幕通しての与謝野家の場面の稽古。
3時過ぎに、直美さんからお弁当の差し入れ
「食べたら芝居が出来なくなるのよね」と言っていた匠ひびきさんが、途端に台詞をいっぱいとちり始める。条件反射のようだ。



5月15日(月)稽古休み
私はNHK大河のリハへ
夜は狂言の稽古。ビデオカメラで動きを撮影

5月16日(火)今日も雨。この頃雨が続く
昨日やり残した1幕の場面から。
直美さんが背中姿で、ぴょんぴょんコミカルに跳ねる仕草にお父さんの寛美さんの姿がダブって見えたのは私だけだろうか?
相手役の台詞の小返し稽古の為に、スッと演技位置についてあげた姿に直美さんの座長としての優しさを見た気がした


5月17日(水)
今日は幕前の路上場面だけの稽古
行商役の人たちにも生活感のある台詞が、演出の宮田さんから渡された。
主役の香川さんが、新しい台詞にアドリブを入れてすぐに対応。稽古場が暖かい笑いに溢れていた
子役の子が2組目の新人達に変わっていた


Kpack←帰宅後に床屋で散髪。私は初めて顔パックをされた。スゴイ顔!


5月18日(木)
NHK「功名が辻」撮影の為、私は稽古お休み
収録は深夜に及び、結局はやっと朝の4時に撮影終了
この模様はNHK総合の7月16日(日)
20:00〜20:45で見られます。私の出番は最初の2シーンです

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立つとこんな姿ですが、その場面ではほとんど坐ってます。それにしてもカツラは痒い



5月19日(金)
眠いが、起きる。当たり前か?!
1幕の稽古。引越し場面の細かい段取りなど
山田純大さんのボケが稽古場で炸裂する!今日は特にスゴカッタ!
彼の体内時間の中で、全てのことが勝手に収束されてしまっている(^0^)
何より素晴らしいのは、思い切りがよく、悪びれないことだ。
萩本欣一さんだったら放っておかないだろう

稽古終了後、松金さん&横堀さんらと初めて飲み会
テアトルエコーと青年座の集まりになった。芝居の話などで、普通の稽古終わりのように盛り上がる。今回はこういう機会があまりないので新鮮だ

jundaiHP掲載を快諾してもらった純大さんのVサイン。柔道着姿で勇ましい。彼の演じる平野萬里役は、与謝野鉄幹の弟子の中で唯一実務の仕事ができる人間である。つまり引越しの場面で働いているのは平野だけなのである



5月20日
主に2幕の稽古
稽古中に演出の宮田さんと台本を入念にチェックする直美さんが、共演者に”台本て、面白いわねえ”と語りかけていた。どうも言い難いような言い回しや、自分の生理に合わない台詞を、徹底的に、そして繊細に作り直していくのである。
”絶対に忘れて飛ぶ台詞は、要らない台詞なのよね”とも言っていた。これは以前野田秀樹が自分の一人芝居の稽古場ドキュメント番組で言っていた言葉と同じであった。
直美さんは、もちろんアドリブも凄い。中でも相手役の格好や行動を何かに例えたツッコミ、細かい情報アドリブの言葉選びのセンスと数と、その素早さがすさまじい
何気なく黙ってそれをフォローしていく香川さんも、私は素敵だと思う

今日は子役が2組目の番だった。以前の組と同じようにやってくれるか不安だったが、どうしてどうして立派にこなしてくれた。長男の光くん役の男の子の台詞が身振り手振りがついて不思議な説得力がある。ま、大人がやったら臭い芝居になるが・・・


築地から銀座まで歩いて博品館劇場まで行く。良い散歩だった
今夜はエコーの後輩で声優では超有名な田中真弓の”おっぺれった”を観劇。ベタな構成や演出がなかなか面白い。一番笑ったのは作・演出でもある三ツ矢雄二さんの遊園地のお兄さん(これは特筆すべきである)と、あまり踊りが上手ではないらしいお婆ちゃん役の男優の台詞”そりゃ踊れと言われれば踊れないことはないけど、基本は出来てないわね”がツボにはまった。
終演後、出演者の清水宏や重田千穂子らとも飲む



5月21日(日)
稽古はお休み。
パソコン内データ整理して、ノートPCに移す。これが結構大変
その他、旅の準備を始める




5月22日(月)久しぶりに良い天気。昼間は半袖姿でOK!
今日は午前11時から、全体の衣装合わせ
私の鳥打帽姿
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こんな顔です


初めての全幕通し稽古
中身だけで大体2時間50分でした

星屑の会の仲間の菅原とピンクの電話の竹内都子の初めての夫婦のお芝居「満月」の稽古を見る予定だったが、すでに稽古は終了。仕方なく、稽古場終了後の飲み会に参加。作:演出の水谷さんやプロデューサーの小野さんもいらした。大阪公演のため本番を観られないのが残念



5月23日(火)
全幕通し稽古の予定だったが、役者からの注文があり冒頭からの小返し稽古になる。心の流れや、全体の見え方などの細かい点検をする。いつもより真剣な空気が漂った。その分時間がかかったので、1幕の前半しか稽古できなかった

今日は朝の築地市場で海鮮丼を食べる
夜は前述の英会話教室。これから2ヶ月は、この学校での授業はお休み。大阪では、あのNOVAの1ヶ月体験レッスンを受ける予定。授業内容を点検します。英会話に興味のある方には良い情報かも?!



5月24日(水)昼は初夏の陽気で、夕方から雷雨
昨日の続き。1幕の細かいチェック。我々特高警察と与謝野家の人々との対立場面が際立つように台詞や立ち居地の直し。緊迫した雰囲気が漂ってくる。この芝居の中でも善と悪とがはっきりする場面である。

直美さんの台詞直しの要望に、演出の宮田さんが代わりの言葉をすかさず送り出す。「頭の中に、そんなマイクロチップみたいのん欲しいなあ」と直美さん。「演出は瞬間芸ですから」と宮田さん。

稽古終わりで石井オフィスの事務所へ。12月の一人芝居フェスティバルの打ち合せ

築地からの帰りがけに、雑誌での評判が高いらしい市場の”小海老天のカレーうどん”を食べた。なかなかGood!


5月25日(木)今日は、ずっと好天
前日までの残りの小返し稽古。稽古場に人がいっぱいなので外から聞いていたが、声だけでも直美さんと香川さんの演技に熱が入っているのが分かる。いよいよ芝居は佳境に入ってきた
そして子役達が伸び伸びしてきた。伸び伸びし過ぎて、笑い出したり、暴走して舞台袖の奥まで走り去ったりもするが、ご愛嬌!

3時から全幕通し
小道具の取り扱い方や、台詞の細かいニュアンスや直しなど、私も芝居の流れに添って丁寧に探ってみる

今日の稽古の圧巻は終幕での香川さんの演技だった。香川さんは決して都合の良い嘘芝居をしない。一瞬にして自分のイマジネーションの世界を具現化しているのが分かる。泣きそうで泣かない、でも涙がこぼれそうになる。だって”男がすたるから”というのがピュアに伝わる。稽古場全員も、沈黙して彼の演技に見入っている。こんな時は稽古場が”魔法の箱”のような気がする。
さらに香川さんが素敵なのは”マジ”な演技をした後に、すぐに直美さんとのアドリブギャグに入っていくところである
ちょっと誉め過ぎかもしれないか?!うーん、でも凄いんだよなあ!


稽古終わりで新国立劇場に駆けつける
永井愛さんの新作「柔らかい服を着て」を観る。インターネットの一行レビューの評判に反して、私は青春群像劇の2幕より、NGO問題を提起した1幕の方が好みだった
終演後に星屑の会の仲間で出演者のでんでんさんと、昨秋の「偶然の音楽」の舞台で一緒だった月影瞳さんにご挨拶
でんでんさんと「牛角」で食事。寅さん映画で言うとタコ社長的な存在であるでんでんさんが、理想に走るNGOの青年達に理不尽に言い込められる場面が面白かったので大笑いしてしまったが、”何だ、あの笑い声は小宮ちゃんだったのか”と指摘される




5月26日(金)今日は曇りで肌寒い
路上場面の抜き稽古のため、私はお休み
演出家からも”皆さん旅の準備をしてください”とお達し






5月27日(土)
今日も通し稽古
直美さんの終幕の熱情が凄い。直球勝負である

カーテンコールの芝居の振り付け。今回は商業演劇には珍しく、終演後に主だった出演者がカーテンコールで登場する。与謝野家に関わった面々と、私ら特高警察の人間など

稽古終わりで六本木の俳優座で観劇
今日は燐光群の「民衆の敵」。イプセンの原作を坂手洋二さんが翻案した芝居。私は喜劇的な1幕より、硬質な2幕の方が面白かった
終演後は坂手さんや藤井びんさんらと飲む




5月28日(日)午後からは初夏の気候
最終稽古。12時から全幕通し
演出の宮田さんから”良い感じに上がってきました”との、お言葉
新歌舞伎座のスタッフの方々は、毎日ニコニコと稽古を見ながら笑っていた

明日は大阪入りである




5月29日(月)昼間の東京は夏の気分
今日から我が家も光ファイバーだ

狂言の稽古。練習不足で絞られる。再度ビデオ撮り

東京駅午後7時26分発の、のぞみで出発
10時2分新大阪着。地下鉄御堂筋線で女性専用車両に危うく乗り込みそうになりドキッとするが、なんばに到着。
宿泊のホテルはなかなかGood

明日から初の新歌舞伎座1ヶ月公演である