コント赤信号の劇団が旗揚げしました



1984年4月、私にとっては待望のコント赤信号の劇団が出来ました。私が28歳になった春のことでした。記念すべき第1回公演の布陣は産声を上げたばかりの劇団としては、今考えると超豪華です。
脚本に第三舞台の鴻上尚史、演出は第三エロチカの川村毅です。この顔合わせは後にも先にもこれっきりでしょうねえ。どうしてこの組み合わせになったかというと、まずは劇団を新たに立ち上げるべく新しい劇作家を捜しまわっていたことに始まります。そしてサトウの切り餅やSONYのウォークマンのCMでお世話になっていた鬼才CMディレクター川崎徹さんに第三舞台を紹介されました。そこで相棒の石井君と早稲田のテント劇場まで公演を見に行ったわけです。当時流行っていたルービックキューブなんかのギャグが織り込まれていたなかなかテンポの良い面白い芝居でした。多分この芝居が後に彼らの代表作になる「朝日のような夕日を連れて」の原形だったと思います。
早速主催の鴻上君に事情を説明してお願いすると『台本は引き受けますが、演出までは参加できません。自分の劇団に対して示しがつきませんから。第三エロチカの川村毅に演出を頼めれるなら協力しましょう』と言われたわけです。そこで劇団名からして危なっかしいエロチカの芝居を下北沢のスズナリに見に行くことになります。第三舞台のポップな芝居とは打って変わって、これぞアングラって感じのエネルギーに溢れた芝居でした。ギャグこそありませんが、「状況劇場」なんかも好きだった私はこれはこれで好みでした。この時の芝居はこれもエロチカの出世作になる「ニッポンウォーズ」でした。
mazeranいよいよ芝居の船出が始まるわけですが、まあこの時の舞台写真をご覧ください。よーく出演者を見ると驚きます。
前の3人はもちろんコント赤信号、石井章雄、リーダー渡辺正行、わたくし小宮孝泰の3人です、メイクが濃いですね。とくにリーダーなんか「猿の惑星」みたいです

後列が凄い。左からアニメ「タッチ」のヒロイン南の声の日高のり子(当時彼女とは日本TV系の子供マラソン番組「おはようサンデー」で一緒でした)
そしてリーダーの陰に隠れてるのが今や超大物女優の室井滋(私たちが初めて出演した映画「爆裂都市」で共演。この頃はまだ早稲田のアングラ劇団を経て、やっと自主映画で名が出始めていた時期でした)
チョッキを着ているのは、三谷幸喜の「笑いの大学」で人気者になった近藤芳正(彼はレオナルド熊が募集した劇団七曜日の初期からのメンバーでした。だからこの後も長いこと我々と一緒に芝居することになります)
次は、ダチョウ倶楽部の肥後克弘(渋谷の道頓堀劇場の後輩で、芝居もコントもまだ駆け出しでした)
右の奥で頭を剃っているのが、私たち「星屑の会」の仲間である新納敏正(彼は昔は”東京バッテリー工場”というコントグループの一員でもあり、渋谷道頓堀劇場、あ、これ、我々が修行したストリップ劇場のことです、の後輩でもあります)
その右のモンペを着た女の子は、えー、忘れました。稽古中ずーっとボケていたことは憶えてます。例えば「演技が暗いから、もっとはねた芝居して」と言ったら、ピョンピョン飛び跳ねたりしてました
そしてさらにゲストとして私の高校の同窓生、テクノポップバンドのヒカシューのリーダー巻上公一(変てこな神の役でした)と三田正道(異様な存在感はありましたが、普通の見方からすると芝居はかなり下手だったし、本番前には”体を硬くするんだ”と言って、必ず体を丸めて寝ていました)も客演しておりました。
どうです、凄いでしょう。これで3日しかやらなかったんだから贅沢です。当日仕込みの当日公演だったのも、どう考えても驚異的です。
まあ、そんなこんなで芝居の稽古が始まり、鴻上の本を読んで川村が逃げ出しそうになったりしとこともありましたが、なんとか本番を迎えることになるわけです。この「マゼランブルー」という台本は大きく二つに分かれておりまして、前半のギャグ主体の場面と後半のテーマ主体の場面です。ストーリーの構成としましては赤信号3人がそれぞれ別々に共演者の誰かとチームになりまして、三つの登場人物たちの物語がらせん状にうねって進行していくスタイルです。とにかく新たに芝居ができることに燃えていた私なんかは、燃えてたし、のってました。
でもお客さんの評価としては赤信号の笑いを見に来た人には「難しすぎる」と言われ、作・演出の魅力に引かれて来た芝居ファンには「くだらなすぎる」と言われましたわなあ。

※実はこの時の本番のお手伝いで、当時まだ早稲田の新入生の清水宏が舞台出演していたそうです。この写真の前列左から2番目の男がそうじゃないでしょうか。私からサングラスを借りたそうです。縁とは分からないもんですねえ。
※真冬の日光中禅寺湖まで撮影に行ったこの時のポスターは無茶苦茶カッコ良いです。いつか私が出演した芝居のポスターシリーズとしてこのHPでお見せしたいと思います。

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